PMBOKの知識エリアの一つである「資源マネジメント」について今回はご紹介します。

資源マネジメントで言うところの「資源」には、「人的資源」「物的資源」「必要機器」等、プロジェクト運営に必要な様々な資源が含まれます。

中でも人的資源に関する範囲が大きいため、「人的資源マネジメント」とも言われている内容です。プロジェクトを完遂するために人的資源をどの様に集め、どの様にパフォーマンスを高めるのか。といった事について言及されています。

この資源マネジメントの知識エリアは、プロジェクトのほぼ全てのプロセスで重要となる考え方です。特にプロジェクトの計画時期から実行時期においては何度も必要となる知識だと思います。

※個人的にも資源についてここまで綺麗に体系化されたものは初めて見た気がします。PMBOKの体系化の凄さを感じる内容になっています。ちなみに、プロジェクトマネージャ試験・PMPなどでも問われる箇所になりますので、しっかりと覚えておきましょう!

資源マネジメントとは

ではPMBOKで定義されている内容を基に、資源マネジメントとして行うべき具体的な内容を見ていきましょう。

人的資源マネジメントの計画

実施プロセス:計画プロセス

アウトプット:組織図、体制図

プロジェクトの人的資源マネジメントの計画書を作成します。また、プロジェクトマネジメント計画書に付随する計画書の作成も行います。

ここで作成した資料はプロジェクト後半に至るまで、重要な意味を持つ資料となります。組織図や体制図は、マネージャでなくとも見た事がある資料ではないでしょうか。ここで体制をしっかりと決めておく事で、後々命令系統に混乱が生じない様にします。

アクセシビリティ資源見積り

実施プロセス:実行プロセス

アウトプット:見積もり根拠資料、資源ブレークダウン・ストラクチャー(RBS)

アクティビティリスト等を基にして、プロジェクトを進めるために必要な資源(人的資源、物理資源)の「種類」と「量」を見積もります。

ちなみに、ここで言うアクティビティとは、プロジェクト中のタスクの1つの要素を指します。アクティビティはWBSの最小単位となるワークパッケージを生みだす要素になります。そのためアクティビティ自体は基本的にWBSには載りません。

資源獲得・チーム編成

実施プロセス:実行プロセス

アウトプット:プロジェクト要員の任命、資源カレンダー

プロジェクトを進めるために必要な資源(人的資源、物理資源)を確保します。スキルのマッチした人員を確保して役割を決め、チームとして編成(要員の任命)を行います。体制やチームの編成などは、この時点でほぼ確定する事になります。

また、アウトプットとなる資源カレンダーは資源(要員、物資等)がいつから使用できる様になるかを表したものになります。プロジェクトの初期においては非常に重要な成果物になります。

チーム育成

実施プロセス:実行プロセス

アウトプット:チームのパフォーマンス評価資料

要員の業務レベルを向上させるために、業務用のナレッジ資料を作成して共有したり、勉強会などを開催したりします。業務レベルの向上はそのまま作業の効率化にも繋がります。

また、チーム全体としてのパフォーマンスを向上させるためのチーム内MTG(認識合わせなど)なども開催します。その他にもチームワークの維持・改善を行うために様々な取り組みを行います。

パフォーマンスの状況を評価するための資料を作成して、定期的にパフォーマンス状況の把握と改善(育成)を行う事もあります。

チームマネジメント

実施プロセス:実行プロセス

チームワークやパフォーマンスを高めるために、報告書などでメンバーの管理を行います。またチームメンバー間で何か問題が発生している場合は、その解決を図ります。人と人との仕事ですから、教科書通りにはいかない事も多々ありますが、知識や経験、心を持って解決策を練り上げなければなりません。

メンバーとの会話、チーム全体での打ち合わせ等も開催をしながら、現状の問題回復、プロジェクト達成のために、チームメンバーを常に管理しなければなりません。

資源コントロール

実施プロセス:監視・コントロールプロセス

資源が当初の予定通りに活用されているかどうかを監視します。物的資源の場合は、使用率、消費率が予定通りであるかを判断して、場合によって修正を行います。

資源マネジメントの活用

実際に資源マネジメントをどの様な作業で活用するのかを考えてみましょう。資源マネジメントは、他の知識エリアの「コミュニケーション・マネジメント」や、「ステークホルダー・マネジメント」とも関連性が高いので、その点も考慮しながら活用方法を考えていきます。

「要員数」の見積もりの計算

資源マネジメントとしての知識を活用して、必要な要員の見積もりなどを行う事になります。

プロジェクトの開発規模が明確になったら、(様々な必要データを基にして)納期までに必要な要員数を見積もります。この時点の見積もりでは、基本的にプロジェクト期間中の各月に必要な要員数まで算出する事になります。

ちなみに規模が大きいプロジェクトの場合は「フェーズ1」「フェーズ2」などとして開発期間をさらに切り分け、フェーズ毎に要員数を見積もるケースもあります。
※フェーズを分ける基準は企業やプロジェクトによって異なるため、過去の資料などを参照しましょう。

要員数の見積もりでは、単純に数字を当てはめれば良い訳ではなく、要員の仕事の仕方などを踏まえて、「バランスの良い」見積もりをしなければなりません。なかなか大変な作業になります。

プロジェクトの体制の明確化

資源マネジメントでは、プロジェクトの体制を明確にして「体制図、組織図」などを作成する必要があります。

プロジェクトの中には、プロジェクト全体の責任者、プロジェクトマネージャー、各チームのリーダー、サブリーダー、メンバー、外部のアドバイザー等々の方がいますから、体制を明確にして「命令系統」を明示しましょう。

ここがハッキリしていないと、後々大きな混乱を招きます。仮にプロジェクト実行中に体制が変わる場合は、変更前後で、どの体制がどの様に変わったのか?を明確にしなければなりません。最初に体制をハッキリと決めておく事で、後々で変更があった場合にも局所的な変更と周知で済む事もあります。

(重要な)チームマネジメント

チームマネジメントは一筋縄でいくものではありません。

人間は論理だけで行動する訳ではありませんから、不合理な行動を取ったり、全く予測のつかない動きをする事もあります。

それでもプロジェクトの要員として受け入れたからには、しっかりとマネジメントを続けていなければなりません。時にはメンバーの悩みを聞いたり、メンバーに渇を入れたり、最悪はメンバーにプロジェクトから抜けてもらわなければならない事もあります。

全て正しい選択ができる訳でもありませんが、普段の生活で人間をよく見て、どの様な対応をしていくのが良いのか?をしっかりと考える様にしましょう。

プロジェクトマネジメントの力を証明する?

冒頭でもお伝えした通り、資源マネジメントはプロジェクトマネジメントの中でも非常に重要な部分になります。

プロジェクトマネジメントについてより体系的な勉強をしたい場合は、資格を取得してみてはいかがでしょうか?

特に国家資格のプロジェクトマネージャ試験やPMPを取得できれば、スキルの証明にもなります。

プロジェクトマネージャ試験を取得するメリットと勉強方法について!

まとめ

資源マネジメントの資源には色々な意味があります。

人的資源、物質的資源、その他の機器など、プロジェクトを運営する上で必要な資源の全てを洗い出していかなければなりません。特に最初の計画段階では大変な仕事になるのですが、ここは手を抜いてはいけません。

明確な理由を与えた上で要員の見積もりや、物質資源の供給(予定)などができていれば、後々で想定外の事が発生したとしても対応がしやすいからです。見積もり根拠などが明確でないと、全てが破たんしてしまいます。

特に初めての要員計画などは、どの様な視点から答えを導けば良いかも分からない状態かもしれません。しかし、自分が作成した計画書(その他の資料も)については、その根拠というものを常に明確にしておく様に心がけましょう。

また、要員見積もりなどを行っていると、人的資源や数字だけの算出になってしまい、人のマネジメントだという事を忘れがちになってしまいます。

ワークライフバランスという言葉も一般的になった時代ですから、要員の方が安心して力を発揮できるチーム作りを目指していかなければなりません。