PMBOKの知識エリアの一つである「ステークホルダー・マネジメント」について今回はご紹介します。
さて、ステークホルダーとは一体何の事でしょうか?
PMBOKで言うステークホルダーというのは、
・プロジェクトに影響を与える人や組織
・プロジェクトから影響を受ける人や組織
と定義されています。
仕事を受注しているのであれば、受注先の会社等がまさにステークホルダーという事になりまし、その先にもさらに多くのステークホルダーがいます。単純なプロジェクト関係者とは少しニュアンスが違いますので、その辺りを意識しながら、解説をしていきたいと思います。
コンテンツ
ステークホルダー・マネジメントとは
ではPMBOKで定義されている内容を基に、ステークホルダー・マネジメントとして行うべき具体的な内容を見ていきましょう。
※ちなみに、ステークホルダー・マネジメントは、かつてはコミュニケーション・マネジメントの一部として定義されていました。しかし、年々重要性が高まり、内容を再定義・体系化した事で、独立した知識エリアの一つとなりました。
ステークホルダーの特定
実施プロセス:立ち上げプロセス
アウトプット:ステークホルダー登録簿
まずはステークホルダーの特定(プロジェクトに関係する人、組織の洗い出し)をして登録簿を作成します。ここで言う登録簿は体制図の様なものをイメージすればOKです。
また、登録簿を作成する際には、名前、組織名、役職、プロジェクトがその人物とどの様な関係性を持つのか?などを明確にしておきましょう。特に、プロジェクトの進捗や方向性に影響を与える権限を持った人物が誰なのか?を明確に特定しておく必要があります。
ステークホルダー・エンゲージメントの計画
実施プロセス:計画プロセス
アウトプット:ステークホルダー・エンゲージメント計画書
ステークホルダーの二ーズ、期待を把握して、ステークホルダーが、適切な形でプロジェクトに積極的関与ができる様に計画立てを行います。
例えばですが、ステークホルダーが「文句ばかり言う人」になってしまっては本末転倒になってしまいます。逆に「何も言わない人」になってしまえば、プロジェクトが正しく運営されているかが不透明になってしまいます。「適切な形」で関わるというのは本当に大切ですので、バランス感覚も問われます。
ステークホルダーによっては、本プロジェクトとは別のプロジェクトに関わっている可能性も高いので、他のプロジェクトの進め方などを把握して、プロジェクトマネジメント計画書に付随する資料を作成する事もあります。
ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント
実施プロセス:実行プロセス
ステークホルダーの二ーズ・期待に答える。さらに、ステークホルダーが適切な形でプロジェクトに関与する。という目的のために、ステークホルダーとのコミュニケーションを取ります。
ステークホルダーへの働き方が大切になります。
ステークホルダー・エンゲージメントの監視
実施プロセス:監視・コントロールプロセス
ステークホルダーとプロジェクトとの関わり方を監視します。計画に基づいた関わり方がなされているかをチェックし、もしも適切でないという結論になった場合は是正策を講じる必要があります。
ステークホルダー・マネジメントの活用
プロジェクト運営の中でステークホルダー・マネジメントというのは、かくも忘れがちになりやすいポイントです。ただ、とても重要な考え方でもあります。だからこそ新たな知識エリアとして確立されている訳です。
ステークホルダー・マネジメントの活用を語る上で非常に重要キーワードがあります。それが「エンゲージメント」です。
エンゲージメントとは?
エンゲージメントはマーケティングやコンサルティングの分野から派生したキーワードと言われています。日本語で適切に表現するのが難しい言葉なのですが、企業に対する「愛着」や「信頼」と表現される事があります。
※ブランドに対する愛着度を測定するために、エンゲージメント指数という言葉が使われます。
エンゲージメントには、一体どんな意味が隠されているのでしょうか?
「何となくは分かるけど、表現するのが難しい。」そんな感じだと思います。
ここで使われるエンゲージメントは「自発的で適切な相互の結びつき」とも言えます。お互いの結びつきが強く、それが適切で自発的なものであれば、プロジェクトの進み方も、ステークホルダーに与える影響も「良いもの」になる可能性が非常に高いからです。
※概念的な話なので少しぼんやりした表現かもしれませんが、ニュアンスだけでも掴んでほしいです。
プロジェクトの体制図の作成
プロジェクトを立ち上げたら必ず「体制図」を作成しなければなりません。この体制図には当然ステークホルダーを明記する必要があります。
ステークホルダーの例を挙げると、プロジェクトのオーナー、ユーザ、プロジェクトマネージャー、各チームのリーダー、メンバーなどが挙げられます。
プロジェクトに関係する方々を隅々まで明確化して、体系化を行います。
この時に、ステークホルダーをしっかりと洗い出せないと、後々から意外なステークホルダーが登場して、プロジェクトが頓挫なんて事になりかねません。プロジェクト初期の非常に重要な作業になります。
まとめ
上述していますが、ステークホルダー・マネジメントは、かつてはコミュニケーションマネジメントの一部でしたが、独立した知識エリアとして新しく体系化されました。
これはステークホルダーがプロジェクトに与える影響(良くも悪くも)というのが非常に大きくなっているからとも言えます。
プロジェクトが始まってからスポンサーからの横やりが入り頓挫。なんて話も聞きます。プロジェクトの立ち上げ、計画の時点で、後々で面倒な事にならない様にステークホルダーを洗い出して、体制図を作り、関係性を対象組織、人を明確にしましょう。
そしてプロジェクトが動き出してからも、しっかりと監視コントロールを行いましょう。お互いに適切な関わり方をしているかどうかというのを監視して、問題があれば是正をしなければなりません。