今回はPMBOKの知識エリアの一つである「品質マネジメント」について紹介します。

品質というのは、大抵のプロジェクトで設定される基本目標「QCD」の一つでもあり、品質が悪いとスケジュールやコストにも大きな影響が出てしまう(プロジェクト目標が満たせない)重要な考え方にもなります。

特に、エンジニアとして活躍されている方であれば、品質がどれだけ重要かは感覚的にも分かると思います。それに、モノ作りをしている人間としても品質にはしっかりとこだわりたい所です。

また、プロジェクトマネージャー試験・PMP等でも当然の様に問われる重要ポイントになりますので「品質マネジメント」についてはしっかりと押さえておきましょう。

品質マネジメントとは

品質マネジメントとは、顧客からの要求品質を守るために、プロジェクトの成果物やプロセスの品質を管理する一連の活動の事を言います。

プロジェクトの立ち上げの際に設定された品質目標(信頼性、操作性など)を達成するため、プロジェクト開始後における品質の作成・確認のプロセスを設定して、監視・コントロールプロセスとして品質のコントロールを行う事になります。

PMBOKで定義された内容を基にして、品質マネジメントとして行うべき事を具体的に見ていきましょう。

品質マネジメントの計画

実施プロセス:計画プロセス

アウトプット:品質マネジメントの計画書、品質尺度

品質に対する顧客の要求事項を確認した上で、品質目標の確保を行うための品質計画(テストやレビュー実施の計画)を立案します。

ちなみに、これはプロジェクトマネジメント試験等でもよくひっかかる内容なのですが、品質目標はプロジェクトマネージャーが策定するものではなく、基本的には顧客・ステークホルダーが作成します(助言はする)。但し、ここで作成された品質目標はプロジェクトマネージャーが責任を持って引き継ぐ内容になります。
※実際の現場でも、この様な流れで品質目標が設定されているかは別として。。。

プロジェクトマネージャーからすれば、後々になって、品質目標(もっと細かく言えば顧客の要求事項)を忘れる事が無い様に、しっかりと内容を理解しておく必要があります。また、品質目標はプロジェクトのメンバーにも後々分かりやすく共有すべき内容となります。

この活動の中では、顧客の要求事項を基にして必要な「品質コスト」という考え方(管理ツールとも言われる)を使用して、コスト分析も行う事になります。これらの活動を踏まえてアウトプットである品質マネジメントの計画書を作成する事になります。

品質コストについてはこちらのサイトが参考になります。
https://webrage.jp/techblog/quality_cost/
※システムテストにおける品質の部分を参照

テスト計画

プロジェクトの成果物(主に製造工程で作成された成果物)のテストの計画を行います。

テスト計画と言っても、具体的にどの様なテストを行うのか?という部分はシステム担当者、リーダーなどが行う事がほとんどで、プロジェクトマネージャーの仕事は、

  • テスト期間(いつ、どの位実施するのか)
  • 人あて(誰が実施するのか)
  • テスト工数
  • テスト指標(この後説明)

などを予め計画として盛り込む事になります。

実際にテストが開始した場合は、進捗管理などで適切なテストが行われているか、スケジュールに問題はないかをプロジェクトマネージャーは判断しなければなりません。その際は、テストの網羅性(カバレッジ)、バグの件数などの指標を基にします。どの様な指標を使って判断するかは計画段階でも盛り込む必要があります。

レビュー計画

プロジェクトの成果物に対してのレビュー計画を行います。

最重要の観点としては品質目標(顧客からの要求事項)を達成できるかどうか。

テスト計画と同様に具体的なレビューの方法というよりも、

  • レビュー期間
  • 人あて(誰がレビューを担当するか)
  • レビュー工数
  • レビュー指標

などを計画として盛り込む事になります。

レビューの指標としては、レビューの数量や指摘の件数、場合によってはレビューの方法などを指標とします。

品質のマネジメント

実施プロセス:実行プロセス

アウトプット:品質報告書

品質のマネジメントでは文字通り、実際に品質のマネジメントを行います。計画で行った「テスト」「レビュー」のマネジメントという事になります。

実際のテストやレビューはエンジニアを中心に行いますが、テストとレビューの結果報告書(もしくはそれに代わるもの)を基にして、その結果から品質・進捗・問題点・リソース追加の判断等を行うのがマネジメントの仕事です。

また、品質を高めるために品質不良を早期に発見しなければなりません。

ここでよく使われるのがパレート図等を含む「QC7つ道具」と呼ばれるツールとなります。システム開発に限らず使われるため、よく知られた管理ツールとなります。

QC7つ道具についてはこちらのサイトが参考になります。
https://www.sk-quality.com/qc7/qc701_general.html

テスト

計画した内容に沿ってテストのマネジメントを行います。

テスト作業自体は作業担当者が行い、基本的には、

  • 単体テスト
  • 結合テスト(機能テスト)
  • システムテスト

のフェーズに分かれます。
※プロジェクトによって呼び名は変わります。

この中でさらに細かいテストに細分され、例えばシステムテストであれば、その中性能テストや負荷テストなど様々な観点のテストが実施されます。また、テストの実施方法も細かく分かれており、単体テストであればブラックボックステスト、ホワイトボックステストなど、成果物や品質評価の方法によって最適なテスト方法を選択する事になります。

レビュー

計画した内容に沿って、テストの各フェーズの内容とセットでテスト成果物に対してレビューを行います。
※プロジェクトマネージャーはレビュー作業全体のマネジメントを行う

レビューの方法は様々で、2人1組でテストとレビューを行ったり、チームリーダーがまとめてレビューを行ったりという方法が一般的です。体系化されたレビューの種類としては、インスペクション・ラウンドロビンなどがあります。

効率的で精度の高いレビューを行うために、どの様なレビューの方法が最適かを判断して選択する必要があります。また、レビューの結果や品質結果報告書等から品質の善し悪しを判断しなければなりません。

品質のコントロール

実施プロセス:監視・コントロールプロセス

アウトプット:品質改善、検証済みの成果物

品質のコントロールは、品質のマネジメントとの区別が難しいのですが、成果物が求められている品質となっているかを判断・記録するプロセスとなります。

品質のマネジメントの部分でも活用したQC7つ道具などを活用して、成果物の品質を確認(もしくは確認結果の整理・記録)していくプロセスとなります。

ここでも品質不良を発見した場合は、成果物の品質を改善する事が必要になります。

品質マネジメントの活用

プロジェクトマネジメントの中で品質マネジメントをどの様に行っていけば良いのでしょうか?その点について具体的に見ていきましょう。

上述した通り、テスト・レビューについてはプロジェクトに関わる人であれば誰もが知っている内容になります。但し、PMBOKで語られるのは具体的な作業の中身ではなく、「マネジメント」中心の話になります。

つまり、

  • そもそも品質不良を起こさないために具体的にどの様な取り組みを計画するのか
  • テストやレビューの結果から品質を判断する(品質の限界値まで近づけられているか)
  • 品質を判断するためにどの様なツールを活用するか・どの様に分析するか
  • 品質が悪い(可能性がある)と判断した場合、どの様な対策を行うか(計画)
  • 品質を担保するために、スケジュールやコスト面で計画の見直しは必要か

といった活動が必要になります。

この辺りはプロジェクトの特徴や固有のマネジメント方法によっても異なってきますので、実際に行うべき品質マネジメントのスコープはハッキリと決めておく様にしましょう。

まとめ

さて、今回は品質マネジメントについて解説をしてきました。

品質マネジメントとして行うべきなのは、

  • 品質マネジメントの計画
  • 品質のマネジメント
  • 品質マネジメントのコントロール

が基本となります。

エンジニア経験が長いプロジェクトマネージャーであれば、エンジニア時代の感覚が活かされる機会とも言えます。逆にエンジニア経験が浅い状態でマネージャーとなった場合は計画が机上の空論とならない様に留意する必要があります。