PMBOKの知識エリアの一つである「コミュニケーションマネジメント」について紹介していきます。

コミュニケーションと言うと、人と話す力(コミュ力)という意味で捉えられる事が多いと思います。

それは当然重要なスキルなのですが、PMBOKで言う所のコミュニケーションマネジメントは、プロジェクト情報伝達の手段・ルートなどを整備し、その整備した手段・ルートに沿って円滑に情報が共有される事を目的としていると捉えた方が分かりやすいかもしれません。その目的を前提として、コミュ力が必要とされると考えると良いと思います。

資源マネジメントやステークホルダーマネジメントとも結びつきが強く、定例の会議を立案したり、ステークホルダー登録簿や体制図を作成したりするスキルが求めれます。プロジェクト全体に必要とされる情報を共有するための整備・管理ができる人が、コミュニケーションマネジメント力がある人とも言えるかもしれません。

プロジェクトマネジメント全体においても非常に重要なスキルであり、このコミュニケーションマネジメントの失敗により、プロジェクト自体が大失敗に繋がる事も少なくありません。プロジェクトを動かしていくのは「人」ですから、しっかりと「人」の事を考えてマネジメントする事は当然の様に求められます。

では、コミュニケーションマネジメントについて一緒に確認していきましょう。

コミュニケーションマネジメントとは

PMBOKで定義されたコミュニケーションマネジメントについて、具体的な内容を確認していきます。

コミュニケーション・マネジメントの計画

実施プロセス:計画プロセス

アウトプット:コミュニケーション・マネジメントの計画書

ステークホルダーやプロジェクトメンバーから求められている情報を把握し、情報を伝達していく手段やプロセスを明確にしていく活動になります。情報を伝達するコミュニケーションルートや、会議の計画などを立案します。

また、それらを体系化して「コミュニケーション・マネジメントの計画書」として文書化する事になります。

最終的なアウトプットを完成させるために、コミュニケーション技術や、コミュニケーションモデルといったツール・技法を駆使して活動を進めます。人間関係やチームに関するスキル等が求められますが、それらをどの様に計画として文書化するかが難しい所です。

コミュニケーションのマネジメント

実施プロセス:実行プロセス

アウトプット:プロジェクト伝達事項、コミュニケーション・マネジメントの計画書の改善

コミュニケーション・マネジメントの計画に従って求められた情報を伝達し、会議の運営などを行う活動になります。必要な情報が、適切なルートで、適切な場所に、適切な手段で行きわたらせるために必要なマネジメントを行います。具体的にはさらに以下の様なプロセス・タスクに分けられる事も多いです。

  • 情報の生成
  • 情報の収集
  • 情報の配布
  • 情報の保管
  • 情報の廃棄

プロジェクトを運営する上で必要な情報は多岐に渡りますから、計画していなかった情報を必要とされる事も珍しくありません。その場合は手順に沿って計画書の改善を行いながら、改めて情報伝達手段やプロセスを考える必要に迫られる事もあります。

そのために、適切な形で情報を収集し、適切なタイミングで会議の開催を行う事も重要になります。なかなか計画通りには行かないプロセスでもあるため、ステークホルダーや周りのメンバーにも協力を仰ぎながら、慎重なマネジメントを行いましょう。

コミュニケーションの監視

実施プロセス:監視・コントロールプロセス

アウトプット:作業パフォーマンス情報、変更要求

コミュニケーションのマネジメントと混同しやすい内容ですが、ステークホルダーやプロジェクトメンバーが必要としている情報が適切に伝達しているかを監視して、計画の実現度を確認していきます。

ここでは実際の情報の伝達状況を確認して、計画したコミュニケーションルートや、伝達手段に問題が無いかを監視します。もしも、問題がある場合は、改善する必要があります。

また、プロジェクト開始後にステークホルダー(主にユーザ)から変更要求があった場合などには、その情報をプロジェクト全体に伝達できているかを監視します。

ここで非常に重要なのは、ステークホルダーやプロジェクトメンバーとの対話、そしてコミュニケーション状況(上述の情報伝達などについて)の観察です。事務的な監視では把握できない内容が多いため、積極的に周りのメンバーと会話をして状況を把握していく必要があります。

元々予定していた会議や打ち合わせなども適切に開催されているかどうかを確認して、その中で必要な情報共有が行われているかを確認しましょう。

コミュニケーションマネジメントの活用

具体的にコミュニケーションマネジメントの活用方法を考えてみましょう。コミュニケーションマネジメントはは、他の知識エリアの「資源マネジメント」や、「ステークホルダー・マネジメント」とも関連性が高いので、その点も考慮して考えてみます。

コミュニケーションルートの確立・改善

情報を適切に共有するためには、どの様なルートで情報共有するのかを明確に定義し、事前に周知をしておかなければなりません。

プロジェクト固有の問題や特徴を踏まえて適切なルートを確立しなければならないので、事前の検討が必須になります。また、プロジェクトが開始して、蓋を開けてみたら情報が円滑に回っていないという事になれば、コミュニケーションルートを再考して周知しなおさなければなりません。

会議・進捗報告の計画

これは上述していますが、会議や進捗報告の方法・予定等は計画段階でしっかりと決めておく必要があります。いつ?どのくらい?どんな方法で?という具体的な事も重要ではありますが、計画段階で特に重要なのはプロジェクトに関わる人達に「この様な開始・進捗報告を行いますよ。」という事を伝えて、しっかりと認識を持ってもらう事です。

細かいいつ?どのくらい?どんな方法で?といった事は、実際にプロジェクトが開始してから柔軟に変更していっても大丈夫です。

プロジェクトの情報を的確に把握する

コミュニケーションマネジメントは、プロジェクト内に情報を共有する場を整備する様な活動が多いのですが、プロジェクトマネージャー自身も、プロジェクトの情報を正確に把握しなければなりません。

特にメンバーの残業が多い・不満が出ている等の問題があった場合、それはリスク兆候にもなりますので、適切な対応策を練る必要があります(具体的なリスク対応方法については、リスクマネジメントに含まれます)。

プロジェクトの状況を正確に把握して、都度適切な対応を行える様にしましょう。特にメンバー個人個人の考え方や、メンバー同士の関係性はプロジェクトにも大きな影響を与えます。

まとめ

コミュニケーションマネジメントというのは文中でもお伝えしている通り、人とコミュニケーションを取るという意味合いよりも、ステークホルダーやプロジェクトメンバーが求める情報を適切な形で共有できているかを管理する活動と言っても良いかもしれません。

必要とされる情報が行き渡らないと、それが原因でプロジェクトの大失敗にも繋がってしまうため、非常に重要なマネジメントになります。

そして、必要とされる情報を適切に共有するためには、やはりプロジェクトに関わる全ての人との「会話・意思疎通」を忘れてはなりません。一人一人を向き合う事で、適切なコミュニケーション・マネジメントも実現できる様になるのかもしれません。