転職の面接で問われる志望動機は、採用結果を左右する超重要な質問です。
特に、IT系やエンジニアの仕事は、場合によっては志望動機の深掘りが難しい業界だとも言われます。同業同職種の企業が多い中で、なぜ志望企業を選んだのか?を伝えなければならないからです。そのためか、面接で問われる志望動機は結構適当になってしまっている方も多いです。
内定を勝ち取る人は、志望動機についてもしっかり対策をしています。そして志望動機を語る理由をよく理解しています。
ただ、大抵の求職者は「志望動機を語る理由」「志望動機の作り方・伝え方」を知らずに、面接官の心には響かない志望動機を語ってしまっています。これでは内定は勝ち取れません。
今回は志望動機の作り方について解説をしていきたいと思いますので、志望動機の作り方や伝え方をしっかりと押さえて内定を勝ち取りましょう。
志望動機を語る目的
面接官はなぜ志望動機を問うのでしょうか?
そして、求職者はなぜ志望動機を伝えなければならないのでしょうか?
志望動機を語る目的は、ズバリ「その企業で長期間働ける人材である事を証明する」という事です。
既に職務経歴書や自己PRの目的を理解して作り込みをされている場合、それらとは目的が全然異なる事が分かると思います。
職務経歴や自己PRの目的は「その企業で活躍ができる事・メリットを与えられる事」を証明する事です。しかし、志望動機は目的が全く異なります。この点を押さえていないと、面接官が求めるものとはズレた回答になってしまいます。
中途採用というのは実は非常にコストがかかる活動です。特に転職エージェント経由で人を採用しようとすると、転職者の年収の3割程度をエージェントに支払う事もあります。そうするとかなりの金額になる事が分かると思います。
面接官が志望動機を聞く場合、「採用コストが無駄にならない様に、長く働いてほしい。それを証明してほしい。」と思っているのです。仮に職務経歴や自己PRで求職者がすごく優秀で、活躍できる人材だと判断したとしても、すぐに辞めてしまうと思われると面接を通過できない可能性が高まります。
活躍できる事やメリットは他の回答で証明をして、志望動機は長く働く事を証明する。その点をしっかりと意識しておく様にしましょう。
志望動機の作り方と伝え方
志望動機は以下の流れで作り、その流れで語る様にすると、面接官も納得しやすい内容になります。
- 「自分の転職の軸」を基に「企業向けの転職の軸」を作る
- 志望企業で働く具体的な理由
- 志望企業と自分の目的が同じである事
また、上記と併せて以下の点を盛り込んで伝える様にすると良いです。
- 具体的な業務内容を理解している事を伝える
- 希望企業や業務のネガティブな面・リスクを理解している事を伝える
ではこれらについて具体的に解説していきます。
「自分の転職の軸」を基に「企業向けの転職の軸」を作る
別記事で転職の軸の作り方について紹介しました。
■転職の軸の作り方について
「転職の軸」という言葉をご存じでしょうか? 転職業界ではよく使われる言葉です(既にご存じであれば、転職対策を進められているのだと思います)。 転職の軸というのは、ズバリ「転職する上で最も優先したい事」、さらに言えば「絶対 …
志望動機を作る際には、この転職の軸が大元になります。※転職を進める上ではやはり転職の軸が大事です。
ただ、志望動機というのは往々にして「わがまま」なものになりがちです。これは仕方がありません。
まず、志望企業に転職の軸をそのまま伝えた時に「それはわがままだな」と思われる内容かどうかを判断します。
「自分の転職の軸」=「企業向けの転職の軸」にできる場合
自分の転職の軸が「わがまま」なものではなくて、そのまま使える様であれば「企業向けの転職の軸」として良いです。
例えば、「どうしても自社開発のプロダクトを作りたい」という転職の軸だった場合は、根拠も明確であれば、ほぼそのまま伝えてもOKです。
この場合は「自分の転職の軸」=「企業向けの転職の軸」として真っ当なものなので、少し肉付けをする事はあっても、作り替える必要は無いと思います。
「自分の転職の軸」=「企業向けの転職の軸」にできない場合
逆に、自分の本音の転職の軸が「わがまま」な内容になっている場合は、「企業向けの転職の軸」を作り替えるのが良いです。
例えば、「高年収を得たい!残業したくない!」といった転職の軸は本音ではありますが、そのまま志望動機にするのはちょっとマズいですよね。
この場合は「企業向け」の転職の軸を再構築しましょう。大事なのは自分の本音の転職の軸からはブレない様に伝え方を工夫するという事です。
※元々の転職の軸からブレてしまうと、仮に内定が出て転職したとしても、希望とは違った待遇になったり、希望職種に就けない事になってしまいます。
- 高年収を得たい⇒自分を高く評価してもらえる企業で、やりがいを感じながら仕事がしたい。
- 残業したくない⇒会社とは別で勉強の時間を設けて個人開発を行い、自分から企業にプロダクトの企画を提案したい。
の程度には作り替える事が大切です。他に転職に希望する事とも組み合わせながら、面接官が納得できる様な「企業向けの転職の軸」に作り上げましょう。
転職エージェントを活用する場合は、キャリアアドバイザーに「企業向けの転職の軸」として妥当かを確認してみるのもオススメです。
志望企業で働く具体的な理由
次に志望企業で働く理由を明確に伝える様にしましょう。
ここで重要なのは「志望企業から感じる魅力」を「自分の言葉で感情を込めてしっかりと伝える」という事です。
志望企業で働く理由は論理的な説明ではなくて、オリジナリティのある理由を熱意を込めて語る事が大切になります。
オリジナリティ?と聞くとちょっと難しいなと思うかもしれませんが、この時点までに「転職の軸」を作る過程で、オリジナルの考えやエピソードが生まれているはずです。もしも、月並みな理由しか出てこないのであれば、もう一度「転職の軸」作りを見直す位の気持ちで取り組みましょう。
もし志望企業の製品やサービスを過去に使用した経験があれば、その時の経験談等を語れると非常に強いアピールになります。例えば、以下の様な内容であれば、ある程度の理由になると思います。
現在勤めている会社は自社プロダクトの開発はほとんど行っていないが、ずっとプロダクトの企画・開発をしてみたいと思っていた。
御社では自社プロダクトを開発していて、その製品は自分も使った事がある。実際に使ってみてとても良い製品だった。どうしてこの様な製品を開発できるのか、そのプロセスに非常に興味を持って、実際に携わりたいという思いが強い。
また、これまでの事業戦略を見ていると、競合他社と比べてプロダクトを販売する際のマーケティングにオリジナリティがある。ユーザの動向をよく観察してマーケティングを仕掛けている様に見えるし、その内容が面白いと感じている。そして、その結果が数字にも表れている様に思う。なので、プロダクトをリリースするまでのマーケティング等も学び、その学んだ事を元にして、企画段階でマーケティングも意識したプロダクト企画・開発をしたいと思っている。
ゆくゆくは、御社の製品の様な素晴らしいプロダクトを自分のアイデアで企画して、ぜひ開発・販売したいという夢を持っている。なので、ぜひ御社で仕事をしたいと考えている。
上記の理由というのは、実はあまり論理的なものではありません。利益貢献に関する内容も出てきません。自分の想いが優先してしまっているのです。
しかし、志望動機の理由を語る時というのは、論理的に話すよりも、自分の感情や熱意を伝える事を優先する位で調度良いと思います。面接で問われる他の質問の中でも、志望動機の理由に関しては最も感情的になって良いです。
逆に、後でお伝えしますが綺麗に話す事を意識し過ぎると、熱意が伝わらないなんて結果になってしまいます。
また上記の例で気づいたかもしれませんが、「志望動機」は「転職理由」の裏返しにもなりますので「転職理由」とも併せて矛盾の無い様にしましょう。
志望企業と自分の目的が同じである事
さて、最後に「志望企業と自分の目的が同じである事」にも言及する様にしましょう。
これまでの流れで、志望企業に対する想いは伝わっているはずです。しかし、その想いは企業にとってのメリットと言えるでしょうか?
ここで一旦冷静になりましょう。
まず、志望動機の理由を熱意を持って伝えた後は、少し冷静になり、自己PRの時と同じ様に「自分の経験やスキルを活かして、先ほど伝えた様に熱意を持って仕事をすれば、きっと志望企業のメリットとなる」という点にも少し言及しておくと良いです。自己PRとも併せた最後のダメ押しの様なものです。
志望企業の今後の事業戦略や業務内容などについては事前に情報収集を行い、「志望企業の事業戦略・業務内容=自分の希望している仕事」だという事を暗に伝える様にしましょう。あまり直接的に伝えると無理矢理な感じがするので、軽く伝える程度で良いです。
また、冒頭でお伝えしている通り、面接官が志望動機を問う目的は「長期間その企業で働く事」になります。
一旦冷静になった状態で、長期視点で志望企業の中で仕事をしたい(当然活躍もしたい)という覚悟を伝える様にすると面接官も安心できます。
既に志望企業で仕事をする具体的な理由はしっかりと伝えているので、長期視点で成し遂げたい事などを語ると「長い期間働くつもりなんだな。」という風に思ってもらえます。「他の企業ではダメなんだ。うちの企業で長く仕事をしたいんだな。」と思われる様に想いを伝えきりましょう。
志望動機に盛り込みたい事
上記に併せて志望動機の中に盛り込みたい事も紹介します。これらにも言及する事でさらに熱意が伝わります。
具体的な業務内容を理解している事を伝える
特に未経験分野に転職する場合に多いのですが、具体的な業務内容を理解せずに漠然とした憧れのみで応募する方は結構います。これでは面接官も心配になります。
全てを理解する事は難しいですが、ネット等で調べられる様な情報はしっかりと理解しておきましょう。
例えばJAVAエンジニアの募集があった場合、JAVAのコーディングだけしている。と考えるのは甘すぎますよね?JAVAエンジニアであれば設計やレビュー、テストケース作成はもちろん、スケジュール作成や顧客折衝も求められるかもしれません。業務内容をしっかりと調べておきましょう。
また、プロジェクトの状況や、担当フェーズはどの部分なのか?等もしっかりと把握しておく様にしましょう。調べても分からない部分があれば、面接の中で逆に質問してもOKです。
業務内容を理解している事で、企業に対する熱意もアピールする事ができます。
希望企業や業務のネガティブな面・リスクを理解している事を伝える
転職をする人の大半は志望企業に大きな「希望」を持っている事が多いです。
しかし、転職先の企業にもネガティブな面やリスクがあります。
志望企業のネガティブな面・リスクをよく理解しておく事が大切です。志望動機を語る際には、志望企業から感じる魅力を語る必要がありますが、「良い部分だけしか見ていないのかな?」と思われてしまうケースもあります。
ネガティブな面・リスク等をよく理解して、それでも自分は志望企業で仕事がしたいと伝えましょう。
そうする事で「ネガティブな部分もしっかり理解した上で志望しているんだな」と思ってもらえる事ができ、自分の覚悟もハッキリと伝える事ができます。
志望動機で言ってはいけない事
多くの方がやってしまいがちなのですが、志望動機として伝えるには妥当ではない事も紹介しておきます。
志望動機を作り上げる際に、以下の様な内容になっていないかを確認しておきましょう。
- 一般論になっている
- 感情がこもっていない
- 待遇・制度に乗っかろうとしている(自分がその企業でどの様な事をしたいのかを語れていない)
それぞれについて少し掘り下げて解説します。
一般論になっている
非常に多いのが自分の言葉で志望動機を語るのではなく、以下の様な一般論を言ってしまうケースです。
- 御社は〇〇業界のシステム開発に強みをもっている
- 御社であれば、私のWEB関係のスキルを活かして働く事ができる
- 御社は安定的に業績UPしている
これらは企業の魅力ではありますが、同じ様な企業はいくらでもあります。その企業にしかない魅力を見つけ、その点に共感・興味を持っている事を自分の言葉で語れなければ志望動機とは言えません。
ネットでちょっと調べた様な事を言っても面接官には全てバレています。自分だけが語れるストーリーを伝える事が大切です。
感情がこもっていない
自分の志望動機を伝える時に淡々と話してしまうのもNGです。
論理的には非常にスジの通った志望動機であっても、感情が伝わらなければ面接官からすると「本当にウチの会社を志望しているのかな?他の会社でも良いと思っているのでは?」と思われてしまうとマイナスポイントです。
志望動機を語る時は論理的に話すよりも、熱意を伝える事を意識する位で良いです。面接官の質問の中でも志望動機については特に感情的になって良い場面だ、位に思って調度良いかもしれません。
待遇・制度に乗っかろうとしている
世の中には魅力的な待遇・制度を提供してくれる企業がたくさんあります。
そして、その様な企業には、経験・スキルがマッチしていない求職者が数多く応募してきます。しかし、その様な人は、企業独自の魅力や、自分の想いを明確に語る事ができません。企業の待遇・制度だけに魅力を感じているケースが多いからです。
「この人はウチの会社の待遇・制度に乗っかろうとしているんじゃないかな。ちゃんと熱意を持って仕事に取り組めるかな。。。」と思われると大きなマイナスポイントになります。
企業の待遇・制度に魅力を感じていたとしても、事業戦略・理念・業績はもちろん、具体的な業務内容・取り組み・プロダクト等細かい部分に魅力を感じている事を伝えなければ、待遇・制度に乗っかろうと思われても仕方がありません。本当にその企業に魅力を感じれる様に事前の調査をしっかりと行い、企業そのものに対する情熱を表現しましょう。
まとめ
今回はIT系・エンジニア転職希望者向けに志望動機の作り方・伝え方を解説しました。
最後におさらいをしたいと思います。
■志望動機の目的
その企業で活躍し、長く務める意思がある事を証明する事
■志望動機の流れ
- 「自分の転職の軸」を基に「企業向けの転職の軸」を作り上げる
- 志望企業で働く具体的な理由を述べる
- 志望企業と自分の目的が同じである事を伝える
■志望動機に盛り込みたい事
- 具体的な業務内容の理解
- 希望企業や業務のネガティブな面・リスクの理解
■志望動機のNG例
- 一般論になっている
- 感情がこもっていない
- 待遇・制度に乗っかろうとしている
これらの事をしっかりと伝えきるには事前の調査もやはり重要になってきます。自分の転職の軸を基に、必要な情報をしっかりと収集して志望動機を整理しましょう。
志望動機が客観的に変ではないか?を知るためには、転職エージェントでキャリアアドバイザーに相談をする事も非常に有効です。
自分が働きたいのは御社なのです!という気持ちと、長く仕事をするつもりです!という気持ちをしっかりと伝えきりましょう。志望動機は面接の合否を左右する重要なものですので、しっかりと練り上げて、熱意たっぷりに伝える様にしましょう。