「転職の軸」という言葉をご存じでしょうか?
転職業界ではよく使われる言葉です(既にご存じであれば、転職対策を進められているのだと思います)。
転職の軸というのは、ズバリ「転職する上で最も優先したい事」、さらに言えば「絶対に実現したい事」を指します。この転職の軸は誰かに決められるものではありません。必ず自分で決める必要があります。
そして、転職活動を行う上で一番最初に取り組まなければならない事であり、転職成功の可否を決める重要事項とも言えます。
それはIT企業やエンジニアへの転職を希望している場合も全く同じです。このサイトのテーマでもある「(可能な限り)自由に作り、自由に仕事をして、自由に生きる事」を実現するためには必要不可欠な作業になります。
今回は「転職の軸」の作り方についてお伝えしたいと思います。
- 転職の軸を決める理由を知りたい
- 転職の軸を決め方を知りたい
- 転職の軸がどんな時に問われるのかが知りたい
転職の軸を最初に決める理由
なぜ転職の軸を最初に決めなければならないのでしょうか?
転職して自分の希望の全てが叶えば良いのですが、残念ながら、そんな転職は99.9%ありえません。。。
つまり、転職の条件はトレードオフなのです。自分が希望する事を明確にして、優先度の低い事は実現できなくても良いと割り切る位の気持ちでなければなりません(少なくとも転職時点では)。
例えば、とりあえず転職活動をして、良さげな企業があれば転職する。という方は以下の様な失敗をしてしまいます。
- 軸が決まらないまま転職活動をするが、判断基準を持っておらず、悩んで体力と時間を消費しただけで転職できずに終わる(どこに転職したら良いか分からない)
- 収入が高い企業に内定をもらったので転職したが、自分がやりたい仕事ではなかった(表面的な条件だけで転職をしても、その後で自分が理想とする人生に向けない事に気づく)
- そもそも転職の軸が定まらないと、面接で「志望動機」「転職理由」が曖昧になり、悪い評価をもたれてパスできない(そもそも転職できない)
まず、一番最初に転職の軸を決める事が大切です。そして、冒頭でもお伝えした通り、それが転職の成功でもあり、人生の成功にも繋がっていきます。転職活動は人生を幸福にするためにの手段と捉える事が大切です。
転職の軸の決め方
転職の軸を固める時は以下の流れで行うのがオススメです。
- 理想の人生(キャリア・夢)を明確化する(過去の自分の人生を元に何を重要視しているかを明確化する)
- 現状の仕事では理想の人生を歩めるのか?を考える(理想の人生を歩めないのであれば転職する理由になります)
- 理想の人生を歩むために最も大事な事・優先事項を明確にする(逆に優先度の低い事は諦める覚悟を決める)
- 転職の軸を元に「転職の条件」に現実的な優先順位を付ける
各手順についてもう少し具体的に解説します。
理想の人生(キャリア・夢)を明確化する
まず、理想の人生を明確化する際は学歴・職歴・現状などを考えずに、理想として考えている事をどんどん考えましょう。現実的な考察は後から行いますので、一旦はふろしきを広げて考えてみましょう。
そして、理想にする業界・職種・役職・年収・勤務地はどの様なものなのか?を少しずつ具体的にしていきましょう。
ここで大事なのは、一般論として理想の人生を考えるのではなくて、あくまで「自分が理想とする人生」を明確化する事です。
これは過去の自分の人生を振り返ってみて、例えば以下の様な観点で理想の人生を考えてみましょう。
- これまで、どの様な事に幸福を感じたのか?
- どの様な事にやりがいを感じたのか?
- どの様な事が嫌だと感じたのか?それを回避するためにはどうしたら良いか?
- 仕事と人生を照らし合わせてこうだったらいいな。と思う事はどんな事か
- 家族の人生も考えた時に、理想の人生はどの様なものか
これは言い換えると「自己分析」です。自己分析は転職するための条件洗い出しの様な観点で語られる事がありますが、自分の理想の人生は何なのか?をしっかりと考える事の方がむしろ大事な自己分析だと言えます。
これが明確になったら、次のステップに進みましょう。
現状の仕事では理想の人生を歩めるのか?
次に、現状の仕事・企業で理想の人生を歩めるのか?を考えてみましょう。
もしも、現状のままで理想の人生を歩めるのであれば転職活動は必要ありません。今の会社で思う存分に仕事をしましょう。
ただ、転職を少しでも検討している時点で、理想の人生を実現できない理由が何かあるのではないでしょうか?
ここで考えた事は転職の面接でも問われる「転職理由」にも繋がります。自分の生の声をそのまま面接官に言う訳ではないですが、どうしても前職or現職では実現できなかった事は、面接の場でハッキリと語る事が必須になりますので、しっかり考えて自分の言葉で語れる様にしましょう。
理想の人生を歩むために最も大事な事・優先事項を明確にする
次に、最も大事な事・優先事項を明確にしましょう。
これまでのステップを踏んでいれば少し明確になってきたのではないでしょうか?
流石にたった1つだけに絞り込むのは難しいかもしれませんが、1つか2つに転職の軸を絞り込んでいきましょう。
※これまでに自己分析をした事が無いと、絞り込むのは難しいかもしれません。その場合は最初のステップに戻り、理想の人生について何度も考えてみて下さい。
転職の軸を決める時の注意点
最も優先する事を決める訳ですから、最悪捨てなければならない事をハッキリと決めておく必要があります。
残業が多いが高年収が得られる企業が良いのか?収入が低くても良いから残業が無い企業が良いのか?これは人によって全然違います。よく言われますが、全てが整った企業はほぼ存在しません。つまりトレードオフになります。
※応募するのは全然良いですが、倍率100倍以上の人気企業なので、なかなか通らないかもしれません。理想の人生(キャリア・夢)をよく考えて、何を優先とするのかをしっかりと決めましょう。
転職の軸を元に「転職の条件」に現実的な優先順位を付ける
既に自分の中での転職の軸は大体決まっていると思います。
ここから、実際に転職活動をするために、現実的な転職の軸に落とし込む必要があります。
転職の軸を一旦冷静に見直して、再度確立させる
ただ、転職の軸は今の自分の実績やスキルと見合わせて現実的かどうかを一旦考えてみましょう。(最初はふろしきを広げて理想の人生を考えましたからね。)
特に、未経験の分野に挑戦する場合は、希望が完全に叶うかどうか分かりません。情報収集などをしながら、転職の軸として妥当なものを考えていきましょう。
例えば、AIエンジニアになりたい!という転職の軸があったとしても、未経験者でもAIエンジニアになれるケースは少ないです。その場合、すぐにAIエンジニアになる事を転職の軸にするのではなくて、まずはAIエンジニアがいる会社への転職して、数年経験を積んでAIエンジニアになる事を転職の軸にする事で、少し採用の枠も広がってくると思います。
※この辺りは、周りの友人や、転職エージェントのキャリアドバイザーに相談してみるのも良いと思います。
理想の人生を求めながら、現実的な条件を確立させましょう。
転職条件の優先度
次に転職条件の優先度を決めていきましょう。
たった1つか2つの転職条件だけで転職活動をする訳ではありませんよね。
やはり、その他にも転職に求める条件が出てくるはずです。ですから転職の軸を基にして、条件に優先順位を付けましょう。
重要なのは、転職の軸に基づいた矛盾の無い優先順位の付け方をするという事です。
優先度1位の条件(転職の軸)が「高年収」で、2位の条件が「ワークライフバランス」では優先度の付け方が「ちぐはぐ」だと思いませんか?
※高年収の場合は往々にしてワークライフバランスは取りにくい事が多いと思います。
転職条件の優先度を考えてみましょう。
例えば、以下を転職の軸にした3名の方がいるとします。
- 上昇志向が高いので「高年収」を転職の軸にする!
- 家族との時間を大切にしたいので「ワークライフバランス」を転職の軸にする!
- 将来的に独立を考えているので「副業できる事」を転職の軸にする
この場合、転職に求める条件の優先度もおのずと以下の様に決まってきます。
高年収を得たい!
- 高年収
- 業種と職種の組み合わせ
- 役職・裁量
- スキルアップ
- 企業規模
⇒高年収を得たいので、年収や業種・職種についての希望優先度が高い。ラークライフバランスなどは優先度低い
ワークライフバランスを重要視!
- ワークライフバランス
- リモートワークが可能な会社
- 勤務地
- 業種と職種の組み合わせ
- 風通しの良さ
⇒家族との時間を取るために、ワークライフバランスを最優先、リモートワーク等もできれば理想的!年収は後回し!
副業をしたい!
- 副業がOKの会社
- ワークライフバランス
- 業種と職種の組み合わせ(副業とシナジーがある)
- スキルアップ(副業とシナジーがある)
- 勤務地
⇒副業がOKの会社が絶対条件!副業の時間も取りたいのでワークライフバランスも重視したい。さらに、なるべく副業と関連ある仕事だと尚良い
おまけ(転職の軸の修正)
一旦転職の軸を決めても、転職市場と自分が求める条件がかみ合わず、どうしても転職が進まない事があります。
もし転職の軸があまりにも間違っていると思ったら、優先度3~5辺りの条件は修正してもOKです。
※「収入」「待遇」「企業規模」などは当然気になる方もいると思います。この辺は多少迷いが出るのも当然です。
ただ、優先度1、2の条件をコロコロと変える様な状態なのであれば、自己分析が全然足りてないです。
まずは一旦でも良いので「転職の軸」を決めて転職活動をする事が重要です。
転職の軸はキャリアアドバイザーや採用担当者からも問われる
転職の軸は転職エージェントのキャリアアドバイザーや、企業の採用担当者からも問われる事があります。
ただ、転職の軸の伝え方には注意点もあるので、ここで確認しておきましょう。
転職エージェントのキャリアアドバイザーと面接する際の伝え方
転職エージェントと面接する際にも転職の軸を伝える必要があります。
何が転職の軸なのかを伝えないとキャリアドバイザーから検討違いな企業を紹介される事になってしまいます。
転職エージェントは自分の希望と方向性がマッチすれば力強い味方ですが、希望をしっかりと伝えないと、お互いに時間を無駄にする事になります。
自分の転職の軸を基にして、どの位の求人があるかも正直に聞いていきましょう。そして、少しでも求人があれば、順次紹介してもらいましょう。
もしも、求人が少なすぎるのであれば、一旦、転職の軸を見直す事も検討しましょう。転職未経験なのであれば、これはしょうがない所です。理想の人生を一度検討した上で、現実的な落としどころを考える事は全然問題無いです。そもそもの転職の軸が決まっていない事こそが一番の問題になります。
採用担当者と面接する際の伝え方
面接の際には「志望動機」「転職理由」を必ず問われます。その関連で転職の軸に言及される機会は多いです。
志望動機と転職理由を問われた際に、面接官が気にしているのはおよそ以下の点です。
・志望動機⇒なぜその企業を志望するのかを知りたい。企業に定着する人材であるか?
・転職理由⇒なぜ前職or現職を辞めなければならないのか?
転職の軸がハッキリとある事で、その点を明確に伝える事ができます。ただ、企業面接の際は、少し注意しなければならない点もあります。
注意すべき事
転職の軸はあまりにワガママな内容もありますよね。
以下の様な転職の軸は、そのまま面接官に伝えるのはさすがに引かれるでしょう。
- 残業が嫌なのでワークバランスを取りたい
- とにかく高年収が良い
これらを転職の軸としても良いのですが、面接官にそのまま伝えるのは問題です。
企業の根本的な考え方と嚙み合わせながら妥当な「志望動機」「転職理由」に落とし込む事が大切です。
そのためには企業の募集条件をよく理解して、ワガママな転職の軸と、企業が求める条件との落とし所をよく考えて伝えましょう。
せめて、以下の様な形には言い換えるのが良いです。
- 業務を効率化して残業を減らし、コストカットしていきたい。その様な企業であれば社員満足度も高まる(ワークライフバランス)
- 自分がしっかりと評価される企業で仕事をする事で、仕事にもコミットできると考えている(高年収=高評価)
これだけでも少し甘いかもしれません。応募企業に合わせて面接官も納得できる内容に言語化して伝えましょう。
まとめ
今回は転職の軸の固め方について紹介をしました。
転職の軸は以下の様な流れで固める様にしましょう。
- 理想の人生を明確化する
- 現状の仕事で理想の人生を歩めるのかを検討
- 最も大事な事・優先事項を明確にする
- 転職の条件に現実的な優先順位を付ける
再三お伝えしている通り、転職が成功できるかどうかは「転職の軸を決めているかどうか」で決まります。
自分の理想の人生に一歩でも近づくために、転職の軸は最初にしっかりと固めてから転職活動を進めましょう。