PMBOKをご存じでしょうか?
PMBOKはシステム開発の世界では業界標準として用いられる事も多く、プロジェクトマネジメントを行う上では非常に重要な知識の集合体です。ベテランのプロジェクトマネージャーの方であっても何度もPMBOKの冊子を読み直している場面をよく見かけます。
大規模なプロジェクトになるとリーダークラス以上は業務知識に加えて、プロジェクトマネジメントの知識も問われます。そのため、PMBOKの内容が頭に入っている前提で会話が進む事も多々あります。特に、SIerなどの場合は、プロジェクトマネージャー以上の管理職には、PMBOKの内容を理解する事を義務化している会社もあります。
プロジェクトマネージャーの教科書とも言えるPMBOKについて解説をしたいと思います。
コンテンツ
PMBOKとは?
PMBOK:Project Management Body of Knowledge
※日本ではピンボックと言われます。プロジェクトのミーティングでも「ピンボックによると~」なんて言葉が出く事が多々あります。
PMIが発行している、プロジェクトマネジメントのガイドラインです。分かりやすく体系化されているため、日本でも多くのプロジェクトマネージャー(それ以上の管理職)が、PMBOKを元にして業務管理を行っています。
ちなみにシステム開発のマネジメントにとどまらず、プロジェクトと呼ばれるものであればこの知識を活かした業務を行う事ができます。
PMIとは?
PMI:Project Management Institute(プロジェクトマネジメント協会)
PMIは1987年に設立され、アメリカに本部を置いています。
PMI日本支部も存在しており、日本国内のPMBOKの普及や、多くのプロジェクトマネージャーが取得するPMP試験認定などについては日本支部が行っています。
綺麗に体系化されている
個人的に海外(特にアメリカ)で作られたガイドラインというのは、本当に分かりやすく綺麗に体系化されているなと感じます。アメリカ人の方は子供の頃から体系化する力を鍛えられると言いますからね。
様々な知識があっても、体系化されていなければ自分の中で扱うのは非常に難しいと思います。PMBOKは既にしっかりと体系化されているため、量のわりには質の良い知識を取り入れる事ができると思います。
PMBOKの内容
PMBOKの内容を語る前に、PMBOKの大枠を捉えておきましょう。
PMBOKの大枠を捉える上で大切なものが3つあります。
それが、
- プロジェクトマネジメントの5つのプロセス
- 10個に分類された知識エリア
- 3つのパート
になります。
これだけ急に言われても「は?」という気持ちになるかもしれませんが、PMBOKを体系化する上で非常に重要なキーワードになります。5つとか、10個とか数字が多いと思うかもしれませんが、これこそが体系化なのです。
では、この3つの面からPMBOKを解説していきます。
プロジェクトマネジメントの5つのプロセス
最初にこちらからお伝えした方が良いと思うので、まずはプロセスについて取り上げます。PMBOKが登場するまでは、プロジェクトというのは「目的」に焦点を当てていたと言われています。
目的に焦点を当てたQCDモデルとの違い
日本でも当時スタンダードと言われていたQCDモデルなどを使ってプロジェクトが運営されていました。
■QCDモデル
- Quality(Q): 品質
- Cost(C):コスト
- Delivery(D):納期
このQCDモデルではプロジェクトの目的部分に焦点が当てられていますよね。今でも非常に重要な考え方と言われていますが、プロジェクトのプロセスについてはあまり語られていません。つまり、どの様にすればこの3つを実現する事ができるの?という部分が分かりにくい訳です。
PMBOKのすごい所は、「プロセス」の部分にも焦点を当てて体系化されている事です。
例えば、コストをかけないために、どの様なプロセスでプロジェクト運営をするのか?もしくは、どの様にして人的資源を確保するのか?という部分を掘り下げて考えられているのです。
まさに目的を達成するための手段が細かく分析されているのです。
5つのプロセスとは?
ではPMBOKで焦点が当てられている「プロジェクトのプロセス」とは何でしょうか?
それが以下になります。
- 立ち上げプロセス
- 計画プロセス
- 実行プロセス
- 監視、コントロールプロセス
- 終結プロセス
基本的なプロジェクトの流れ、まさに「プロセス」の全てに焦点が当てられている事が分かります。全体プロセスをこの5つのプロセスに分けるのがPMBOKの考え方です。
この5つのプロセスはPMBOKを語る上で必須になりますので、しっかりと覚えておきましょう。
10個の知識エリア
次は知識エリアについて解説します。
「PMBOKがそれまでのプロジェクトマネジメントよりもプロセスに焦点を当てて、より大きなフレームワークである事は分かった。では、具体的に各プロセスで求められるものは何なのか?」という事が気になりますよね。
それが以下の10の知識エリアになります。(QCDの内容も包括されています。)
※それぞれの知識エリアについては、リンク先でさらに詳しい解説をしています。
- 統合マネジメント
- スコープマネジメント
- スケジュールマネジメント(QCDのD)
- コストマネジメント(QCDのC)
- 品質マネジメント(QCDのQ)
- 人的資源マネジメント
- コミュニケーションマネジメント
- ステークホルダーマネジメント
- リスクマネジメント
- 調達マネジメント
この10個の知識エリアが各プロセスの中で必要になる。という訳です。
例えば、QCDの一つでもあるスケジュールマネジメントは、先ほどお伝えした「計画プロセス」や「監視、コントロールプロセス」の中で必要となる知識になります。
3つのパートとは?
さて、PMBOKには3つのパートというものがあります。
パートとだけ言われてもピンと来ないかもしれませんが、これは何かと言うと、
- 入力
- ツールと実践技法
- 出力
の事です。
例えば、プロジェクトの計画プロセスにおいて、人的資源を確保するためには、どの様にして人を集め、どの様にして人にプロジェクトの目的を伝えれば良いのか?そして結果としてどの様にすべきか?という事を段階的に考えたものです。
先ほど挙げた5つのプロセスの中で、どの様に10個の知識を活かすべきなのか?をさらに具体的に落とし込んだものと思っても良いと考えています。
まさに綺麗に体系化されています。この辺りの体系化する力はまさにアメリカっぽいなと感じます。
おまけ「資格取得」
PMBOKは今やプロジェクトマネージャにとっては必須知識です。
※企業も、各プロジェクトのマネージャにはPMBOKの知識や考え方をしっかりと教育しています。
ですから、PMBOKの理解度を客観的に図る指標として資格を取得するのも良いと思います。
PMBOKの理解度を図るための代表的な資格は以下の2つではないでしょうか。
- PMP:PMIが実施しているプロジェクトマネージャについての国際資格
- プロジェクトマネージャ試験:IPAが実施しているプロジェクトマネージャについての国家資格
いずれも、持っているだけで知識・スキルの証明になる価値のある資格です。
プロジェクトマネージャについては別記事にまとめていますので、良ければ参考にして下さい。
まとめ
PMBOKは何度も学び直さなければならない知識になります。実際にPMIが認定しているPMP試験などでは、数年おきにPMBOKの内容を理解して資格を更新する必要がありました。(今現在は少しゆるくなった。)
さらに、PMBOKは実務の中で役立てるべき知識ですから、実務の中でしか学べない事もあります。プロジェクトが変われば実践的な知識やスキルも当然変わりますから、常に学び直しをしなければなりません。当たり前と言えば当たり前なのですが。。。
PMBOKの内容を理解すれば、プロジェクトは完璧!なんて事は当然ありませんから、実務の中からもしっかりと様々な事を学びとり、有能なプロジェクトマネージャーを目指して精進しましょう。
プロジェクト内の立場がプロジェクトマネージャではない人もPMBOKの考え方を学んでおくと、業務の中で必ず役に立つと思います。プロジェクトマネージャからの支持の内容もよく理解できる様になると思います。
本当に役に立つ考え方ですから、PMBOKはプロジェクトに関わる全ての人が理解すべき内容といっても良いと思います!